OECDのHourly Earnings

 OECDのMain Economic Indicator の一つにHourly Earnings がある。その名の通り、名目時間当たり賃金を示している。国際比較に有益なのだが、残念なことに、このデータは日本だけは月額になっている。他の国は時間額なので、比較には注意が必要だ。

 OECDのサイトのHourly Earnings の表には、次のような注がついている。

This indicator is not available for Japan. In order to calculate an area total for this indicator, the series monthly earnings in manufacturing seasonally adjusted has been used as a proxy.

拙訳 日本については、この指標は入手できなかった。地域の合計を求めるために、代理として製造業の季節調整済みの月当たり賃金が用いられてきた。

なお、資料の出所が厚生労働省の毎月勤労統計の製造業規模30人以上事業所のものであることも示されている。

 OECDのこのページから stats.oecd.org Labour→Earnings→Hourly Earningsと進み、Japanの右隣りにあるiマークをクリックすると注が表示される。(2021年10月28日現在)

 月当たり労働時間が変化しなければいいのが、日本の場合、労働時間に短縮傾向があるので取り扱いが難しい。

 幸い、この日本のデータは毎月勤労統計の製造業30人以上規模の事業所の現金給与総額の指数から取られている(就業形態計である。)ので、これを毎月勤労統計の総実労働時間指数で割ることで、1時間当たりのものを計算することができる。

2015年を100として、両者を比較すると次のようになる。年 月当たり、時間当たり

1990年 82.3  76.7

1995年 90.9  91.1

2000年 95.7  95.2

2005年 99.5  97.9

2010年 96.7  97.1

2015年 100  100

2020年 99.6 105.3

 2015年と2020年の間では、月当たりは減っているのに、時間当たりは増加している。この間の労働時間の短縮の効果である。

 これらを総務省消費者物価指数帰属家賃を除く総合で割ることにより、実質賃金指数を計算してみる。

1990年 89.7  83.6

1995年 93.1  93.3

2000年   97.1  96.6

2005年 103.8   102.2

2010年 101.2   101.6

2015年 100  100

2020年 97.4 103.0

 

 なお、毎月勤労統計では、常用労働者の定義が2018年から変更されており、その前後の指数は厳密には接続していない。