OECDの Average Wage

 OECDのAverage Wageは、年間の平均賃金の水準と傾向を、国際的に比較するための指標である。ここで、比較すべき「賃金」と考えられているものは、1時間当たりの賃金である。欧米では、Wage  とはそういうものなのだ。日本では、月給、あるいは年収を賃金ということが多いが、そういう意味での賃金ではない。

 この指標は、全産業、すべての種類の労働者をカバーする OECDのNational Accountから計算されている。計算の手順は次のとおりである。

1 SNAの賃金及び報酬(各国通貨建て)を平均雇用者数で割る。これにより、雇用者一人当たりの年間賃金が得られる。SNAには国際的な基準があり、OECD加盟国はこれに基づいて作成しているので、加盟国間で比較可能である。年間賃金、あるいは年収ならこれで済むが、それでは、Wage  の比較にならない。Wage  に比較を目指してさらにプロセスが進められる。

2 これを年間当たり週の数で割る。これにより、雇用者一人当たりの週の賃金が求められる。フルタイム労働者とパートタイム労働者の1時間当たりWage(賃金)が同じでも、パートタイム労働者の割合が高い加盟国では、週当たり労働時間が短いので、週当たり賃金が低めに出る。

3 これをフルタイム労働者、パートタイム労働者全体の平均週当たり労働時間で割る。この労働時間は、それぞれの労働者の主たる仕事のものである。副業がある場合はその労働時間は除かれる。これにより、1時間当たりの平均賃金、Wageが求められる。これを年間の賃金に換算するために、年間の平均労働時間をかける必要があるが、フルタイム労働者とパートタイム労働者の加重平均をとると、パートタイム労働者の割合の高い加盟国は年間賃金が低めに出る。これを防ぐ必要がある。

4 そこで、1時間当たり賃金に、フルタイム労働者の平均週当たり労働時間をかける。この労働時間も主たる仕事のものである。これにより、労働者がフルタイム労働者の平均的な週労働時間働いたときの週当たり賃金が求められる。

5 これに、年間当たりの週の数をかける。これによって、労働者がフルタイム、パートタイムを合わせた平均的な1時間当たり賃金(Wage)でフルタイム労働者の平均的な労働時間働いたときの年平均賃金(各国通貨建て)が求められる。

6 これを購買力平価(PPPs)でアメリカドルに換算する。これにより、各国の平均賃金が購買力平価で表したドル建てで示される。

 

単純にSNAの賃金及び報酬を雇用者数で割ったもの(年間賃金)とは異なるので、注意が必要である。