二度目の OECDの Average Wage の解説

 この番組で使われた「平均賃金の推移」、「名目・年収」のグラフは、年収を表すものではない。OECDの元データをしっかり読んでいないのだろう。
 これは、フルタイム、パートタイム労働者全体の1時間当たり平均賃金で、フルタイム労働者の年間平均労働時間働いたと仮定したときの年間賃金だ。フルタイム、パートタイム労働者全体の平均年間賃金(年収)ではない。
 OECDがこのような特殊な計算をしている発想について、少し補足説明をしておきたい。OECDは、発想までは説明していないので推測である。おそらく、OECDが念頭に置いているWageとは時間当たり賃金だろう。日本で賃金というと月収、あるいは年収を考えるけれども、OECDの発想にはそういうものはないと思われる。
 この国際比較をするときには、労働時間の長さの影響を排除しなければならない。目指すのは賃金の比較なのだから当然だ。このとき大きな問題になるのが、パートタイム労働者の存在だ。また、利用可能な国際比較に耐ええるデータの範囲で行わなければならない。
 今、二つの国を比較するとして、どちらもフルタイム労働者の時間当たり賃金、パートタイム労働者の時間当たり賃金には差がなく、1,000円だとする。この場合には、統計から賃金を計算したときには、差がないようにしなければならない。
 一方の国では、フルタイム労働者が80人、パートタイム労働者が20人だとする。賃金の総額は80×1,000×2,000+20×1,000×1,000=18,000万円である。一人平均を計算すると、180万円になる。もう一方の国では、フルタイム労働者が20人、パートタイム労働者が80人だとする。賃金の総額は20×1,000×2,000+80×1,000×1,000=12,000万円である。一人平均を計算すると、120万円になる。
 この賃金総額はSNAの賃金及び報酬に当たり、国際的に算出方法が統一されている。年単位で作られており、OECDにとって利用可能な賃金データである。
 二つの平均値の差は、フルタイム労働者とパートタイム労働者の構成の差に起因する。この差が、平均労働時間の差をもたらし、平均賃金に差が生じるのである。この平均賃金をそのまま賃金の指標にはできない。賃金に差がないのだから二つの国の賃金の指標は同じでなければならないからだ。
 どう調整するかというと、それぞれの国の平均賃金をその国の平均労働時間で割って、時間当たり賃金を計算する。賃金総額に合わせて年単位で考えると、最初の国は1,800時間、もう一方は、1,200時間で割る。すると両国とも、1,000円になる。この年間平均労働時間の統計は、週当たり平均労働時間と1年が何州からなっているかから計算できる。OECDには週平均労働時間の統計があるので、利用可能なものがある。
 ここから先が、やや純粋さを欠くのだが、年間の収入にするために、それぞれの国のフルタイム労働者の平均労働時間をかける。この例では、どちらもフルタイム労働者の平均労働時間が同じなので、200万円になる。しかし、フルタイム労働者の労働時間が異なる場合には、差ができてしまう。
 いずれにせよ、これが、OECDのAverage Wageである。単純な年収を表しているのではないことに注意が必要だ。
NHKドキュメンタリー
 
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