政策科学の役割

マックスウェーバーの「社会科学と社会政策にかかわる認識の『客観性』」による説明がある。

1 目的と手段

何かを求めるときには、それ自体に価値があるためか、究極において求められるものの実現、達成に役に立つからか、どちらかである。例えば、地球の温暖化を阻止するという目的のために、火力発電の利用をやめるという場合、地球温暖化防止が目的であり、火力発電の利用をやめるというのは手段である。なお、人類の生存のために地球温暖化を防止するといことであれば、それは目的ではなく手段と位置付けられる。究極の目的、それは複数あっていい、から、目的手段の連鎖を考えていくことができる。

2 社会科学的な考察の対象

① 目的が与えられたときに、手段がどの程度その目的の達成に適しているか

 例えば、地球の温暖化を防止するためには、大気中の二酸化炭素の濃度を減らすこと(目的)が必要であるとして、そのためには火力発電をやめること(手段)が有効であるという考察がある。

② ①から派生して、そのような目的を達成できる可能性がどの程度あるか

 火力発電をやめる(国家の権力を用いてやめさせる)ことは不可能ではない。

③ ②からさらに進んで、その目的を達成できそうな手段(政策)があるから、その目的追求には実践的な意味がある、そのような手段(政策)がなさそうだから、その目的を追求することには実践的な価値がないといった実践上の意味

 これはその目的に価値がないということを意味するのではない。あくまで実践的な意味の有無の判断である。仮に、人類の生存が目的であり、巨大な隕石が地球にぶつかってきて、人類が滅びそうになっているというケースを考える。隕石の衝突を防ぐ方法がないとしても、人類の生存に価値がない訳ではない。

④ ②から進んで、目的を達成できそうな手段がある場合、その手段(政策)を講じることによって、本来の目的以外にどのような波及効果があるか

 火力発電をやめたときには、電力が不足したり、電圧が低下したりする恐れがあるといった考察がある。

⑤ ④から進んで、そのような手段(政策)を採用すべきかどうか

 電力不足を招いてでも、火力発電をやめ、大気中の二酸化炭素濃度を下げるべきかの考察 利害得失を全て考えてどうするかという判断

⑥ ⑤の判断をするときには、複数の究極的な目的(を達成すること)の意義がなんであるか

⑦ 考えている複数の究極的な目標(意義)の間に矛盾はないか

 

要約すれば、何をなしうるか、何を本当に求めているのかの理解は深められるが、何をすべきかを決めることはできない。究極的には何を目標とすべきかは社会科学では決められないから。