長期停滞の説明の試み

今ある製品を作るのに方法が二つあるとする。(1)労働者10人と機械1台、(2)労働者5人と機械2台、どちらも技術的には実行可能だとする。 (1)の労働生産性は(2)の労働生産性の半分と考える。今、賃金は1万円、機械の使用料は10万円だとする。(1)の方…

通信料(携帯電話)

物価低迷続く日本 10月、エネルギー除けば0.7%減: 日本経済新聞 https://nikkei.com/article/DGXZQOUA18BQE0Y1A111C2000000… 携帯電話の通信料が、4月に下がり、10月にさらに下がって、2020年を100として47になっている。少しややこしい問題がある。 消費者…

二度目の OECDの Average Wage の解説

この番組で使われた「平均賃金の推移」、「名目・年収」のグラフは、年収を表すものではない。OECDの元データをしっかり読んでいないのだろう。 これは、フルタイム、パートタイム労働者全体の1時間当たり平均賃金で、フルタイム労働者の年間平均労働時間働…

枯れた技術

「火星の自律走行車」は、かくして完成した:NASAが打ち上げる火星探査機「パーサヴィアランス」ができるまで @wired_jp https://wired.jp/2020/07/26/how-nasa-built-a-self-driving-car-for-its-next-mars-mission/… 「パーサヴィアランスのメインコンピュ…

従事者一人当たり付加価値額

平成28年経済センサス活動調査によると、「072 とび・土工・コンクリート工事業」の事業所は18,390(0.4%)、従事者は164,937人(0.3%)、一人当たり付加価値額は489万円(91%)だ。 「07 職別工事業」の事業所は、142,445(全体の2.9%)、従事者は、7…

高付加価値産業への労働移動

雇用が十分確保されている経済では、「生産性の高い産業への労働移動の推進」が正しい。必要なのはこのような労働移動であって、成長産業への労働移動ではない。成長産業=高生産性の産業という幻想からは脱却しなければならない。 平成28年経済センサス活動…

今後の女性労働力供給

総務省の労働力調査を用いて、女性の労働力人口比率が、男性のものと同じになったら、女性労働力人口が記録されているものに比べて何人増えるかを計算してみる。具体的には、15歳から64歳または69歳までを5歳刻みにし、女性人口×(男性労働力率-女性労働力…

雇用保険財政国庫負担

雇用保険の求職者給付の費用の4分の1を国庫負担するのが原則だ。日雇い労働者の場合は3分の1だ。しかし、平成19年度(2007年度)からは、「当分の間」、その55%とされてきた。さらに、雇用保険法附則第14条第1項により、平成29年度(2017年度)から令和3年…

観測、測定の安定性

気象の観測は、長く続けられている。基本的な観測項目は、気温、気圧、降水量で、このデータが毎日分かるのは、それ自体役に立つ。そして、過去のデータが蓄積されていることによって、長期的な分析が可能になっている。毎月勤労統計の、常用労働者数、平均…

低賃金アディクション

現在の日本には、労働生産性が低く、労働に見合わない低い賃金しか払えないために、日本人を雇用できない職はある。それを外国人労働者受け入れによって穴埋めすることの問題点は、労働生産性が低いまま、したがって、賃金が低い職のままに留まることだ。出…

テニュアトラックにいる労働者のテニュア付与取り消し

テニュアトラックにいた労働者が、テニュアの採用をすると通知を受けた後、過去の思考上の問題により、テニュアトラックでの停職の懲戒を受け、さらに、テニュアの採用を取り消されたらどうなるか? テニュア付与の通知は採用内定と受け取るのが自然だろう。…

健全な経済では人手不足が起こる

健全に成長している経済というのは、労働生産性も賃金など労働条件も低い部門・事業から労働者が、それらが高い部門・事業に移動していく。それによって、平均労働生産性、平均賃金など労働条件が向上していく。 労働生産性も賃金など労働条件も低い部門・事…

携帯電話通話料が押し下げる消費者物価指数

総務省が2021年の消費者物価指数を発表した。 https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf 総合指数は、前年同月比0.1%の上昇であった。 石油やガスの国際価格の値上がりは、消費者物価にも反映されつつある。それでも、上昇率がこのよ…

所得制限

コロナ禍の下での子育て世帯への支援に納得できる公平な所得制限は難しく、資産制限はほとんど不可能だ。完璧な制度はないが、未成年を扶養している世帯にすべて給付し、給付には課税するというのが、現実的な方策だろう。ただし、支給対象は世帯主、あるい…

人手不足

総務省の労働力調査によると、7-9月期に労働力人口は前年同期比7万人増加している。雇用者は、前年同期比29万人(役員を除く雇用者なら34万人)増えている。これは、企業などが辞職、合意解約、解雇、定年、期間満了、死亡を含めて退職した労働者をすべて補…

望ましい人手不足

健全に成長している経済というのは、労働生産性も賃金など労働条件も低い部門・事業から労働者が、それらが高い部門・事業に移動していく。それによって、平均労働生産性、平均賃金など労働条件が向上していく。 労働生産性も賃金など労働条件も低い部門・事…

2021年7-9月期の労働力調査

7-9月期の失業期間1年以上の長期失業者は、2019年に53万人だったものが2020年には50万人に減っていた。これが2021年には68万人に増加した。状況は深刻といえるだろう。男女別に見ると、男は38万人→34万人→50万人と2021年に急増している。女は、14万人→16万…

現金給付嫌いの訳

18歳以下現金給付、年内に支給開始 政府・与党調整: 日本経済新聞 https://nikkei.com/article/DGXZQOUA070T10X01C21A1000000… 「現金給付は世帯主の口座に振り込まれて使途が自由になるため、子育て関連のサービスや用品に確実に使われるようにクーポンやバ…

採用内定取り消し

採用内定、その取り消し法的性格 最高裁の判例で、始期付解約権留保付き労働契約成立説が採用されている。したがって、企業などによる採用内定取り消しは、既に成立した労働契約の一方的な解約である。一般に、内定の際には内定取り消しの事由(条件)が文書…

政策科学の役割

マックスウェーバーの「社会科学と社会政策にかかわる認識の『客観性』」による説明がある。 1 目的と手段 何かを求めるときには、それ自体に価値があるためか、究極において求められるものの実現、達成に役に立つからか、どちらかである。例えば、地球の温…

OECDの Average Wage

OECDのAverage Wageは、年間の平均賃金の水準と傾向を、国際的に比較するための指標である。ここで、比較すべき「賃金」と考えられているものは、1時間当たりの賃金である。欧米では、Wage とはそういうものなのだ。日本では、月給、あるいは年収を賃金とい…

OECDのHourly Earnings

OECDのMain Economic Indicator の一つにHourly Earnings がある。その名の通り、名目時間当たり賃金を示している。国際比較に有益なのだが、残念なことに、このデータは日本だけは月額になっている。他の国は時間額なので、比較には注意が必要だ。 OECDのサ…

円安防止

アメリカの長期金利が上昇して、資金の流出が進み、円安が進んだとする。これが消費者物価の上昇をもたらし、この上昇に耐えられなくなって、円安進行を止めるため、日本の長期金利上昇を容認したとする。このとき量的な緩和を続けられるだろうか?これを検…

約束

なぜ、約束をしたら、守らなければならないか?(契約の拘束力) 人が自由な意思できめたことは、責任をもって守るべきであるからといえる。自己決定あるいは自己責任という考え方に基づく。 個人の自己決定は何故尊重されなければならないか? 義務論からの…